NIKEの創業者のフィル・ナイト氏(Phil Knight)の自伝であるSHOE DOG(シュードッグ)ー靴にすべてを。ー、私の中で2017年に読んだ本の中で最高に面白い本でした。

単なるサクセスストーリーではなく、東洋や西洋の哲学の要素もふんだんに出てき、フィル・ナイト氏の人生哲学が非常に良く表されている書籍です。相当聡明な人であることが窺い知れます。

文の書き方が非常に上手く、テンポが良くてまるで自分もそこにいて同じ状況を体験しているかのような感覚になるほど引き込む力があります。

オニツカタイガーの靴との出会いから神戸でのハッタリ、起業、結婚、取引先から見切られたこと、裁判、借金や預金口座の凍結など様々な喜びや困難を経ていかにしてNIKEを育てていったのか、その波乱万丈の人生が描かれています。

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どんな人に読んでほしいか

起業と人生について書かれた本ですので、今企業の重要なポジションにいる人、起業を志している人、自分の生き方について考えたい人、借金・裁判など企業の経営の危機をいかにして乗り越えるかその事例を知りたい人、企業経営者の家族の方などが読むと非常に勉強になったり「あ、そうそう!」と思えるところがあるのではないでしょうか。

小説のような物語形式になっているので小説が好きな人や、映画のようにテンポが早いので何かもやもやした気持ちを抱えていてスカッとしたい人にもオススメです。

単に「何か面白い話はないかな」と思う人にも十分楽しめる内容となっていますので是非娯楽の為に、人生の参考にする為に読んでみてください。

各項目についての簡単な感想 導入部分:【夜明け】アスリート人生

オレゴンの美しい朝の情景描写から始まります。何かが動き始めることを予感させる書き出しです。いきなり「臆病者が何かを始めたためしはなく、弱者は途中で息絶え、残ったのは私たちだけだ」という開拓者精神の教訓の言葉が飛び出してきます。

「走り続けろ。立ち止まるな。目標に到達するまで、止まることなど考えるな。’そこ’がどこにあるのかも考えるな。何があろうと立ち止まるな」。この言葉が人生の中で最良のアドバイスだったと振り返えられています。

【1962】オニツカとブルーリボン

フィル・ナイト氏が大学の最終学年時に靴についてのレポートを書き、日本のランニングシューズに可能性を感じていた、というところから話が始まります。

日本に行って靴会社を見つけ自分のアイデアを売り込むという、それまで氏が密かに考えてきたことを父親に披露し、日本だけでなく世界を見に行くことの許可を父親にもらい、世界各国を旅するする中で見てきた情景が描かれています。

ハワイで経験した百科事典の販売と証券会社でのセールスの経験が語られています。冒険を止めて引き返すかどうか迷ったことなど実に人間らしい話が描かれています。

特筆すべきなのは、この章だけでなくこの本全体を通して、著者が日本と非常に深い関わりがあったことです。日本の宗教や文化、哲学に至るまでとても熱心に研究されていたことがわかります。日本人としては何とも嬉しいですね。

初めて日本に来た時のことやオニツカ(今のアシックス)の神戸の本社を訪れ「ブルーリボン」という会社を自分が持っているとハッタリを言ってアメリカでオニツカの靴を販売する契約を取り付けた大胆な行動が描かれています。

会計士としての仕事についても次の項で書かれています。

【1964】レジェンド・バウワーマン

この章ではフィル・ナイト氏が大学で陸上をしていた時のコーチであり後にナイキの共同創業者となるビル・バウワーマン氏のことについて書かれています。

天才的なコーチでやる気を引き出す名人であったこと、靴について強烈なこだわりがあったこと。
バウワーマン氏の性格を表すエピソードが多く語られておりどのような流れで共同創業者となったのかが描かれています。

起業に関して家庭内で反発があったこと、渋る父に援助してもらいながらも靴が徐々に売れ始め仲間ができたことや関係を深めるために再度日本のオニツカを訪れたことや商売上の競合相手が出てきたことなどが描かれています。

【1965】巨漢ヘイズ

この章では従業員第一号となったジョンソンやヘイズといった初期の従業員がどのようにして事業に加わってきたのかということや銀行とのやりとりについて抱えています。

飛ばしすぎるなと諌める銀行とさらなる売上向上を目指す経営者。相容れない二つの立場からどのように事態が進展していくのか。

また、オニツカからの仕入れの発送が常に遅れていたことなどもあり、著者はプライス・ウォーターハウスで仕事をしながら’副業’として靴を売る会社を経営していたことも印象的です。

あのNIKEは副業から始まった会社だったのですね。

【1968】ペニーとの結婚

ここでは氏が結婚に至るまでのことについて描かれています。

大学で会計を教える仕事をしながらブルーリボンを経営する氏が奥さんとどのように出会って結婚に至ったのか。

この後の章でも結婚生活についてのことはよく触れられています。

事業と結婚生活をどう両立させていったのかということが詳しく描かれています。

【1970】8000ドルの借金

ここからの章はブルーリボンを成長させる過程で訪れた経営危機について描かれています。

オニツカとの関係の雲行きが怪しくなっていくところから始まり銀行とのギリギリの交渉、綱渡りの資金繰り。

そして日商岩井からの助け舟。厳しい状況でどのようにしてビジネスを成長させていったかについて描かれています。

その後さらにオニツカとの関係が悪化し、というよりもオニツカが一方的にブルーリボンを見下したことによりオニツカからの仕入れではなく自前で靴を作って販売していく方向に舵を切ります。
オニツカはブルーリボンを北米での販売を請け負う会社の一つとしかみなしておらず、しかも不適格との判断をしていたのです。

まさかその会社が後のNIKEになるとは想像もできなかったでしょうし結果的にオニツカの北米での戦略の一つが失敗したということなのでしょう。

この後の章にある裁判のシーンやお金が足りなくなって、本来返済しないといけない日商岩井からさらに借り入れをしないといけない事態になるシーンは本当に臨場感がありました。

危機を乗り越えるには運もありますが、信じて知恵を絞って必要な努力を継続することが何よりも重要と教えてくれる部分です。

【1975】プリとの別れ・【1976】バットフェイス

NIKEの発展の過程で欠かすことのできないのが有名アスリートとの関わりです。何回もオリンピックや陸上の大会のシーンが出てき、当時の熱気溢れる雰囲気が本書の随所に描かれています。

アスリートと靴会社がどんな関わりをしていたのかを見ることも本書の楽しみ方の一つです。

また、会社を経営していくには社内にも様々なメンバーがいることは当然で、どんな文化で会社が運営されてきたのかについてフォーカスして描かれています。

最後に

ここ以降の章にも上場についてなどの話があるのですが、主に書かれているのは1980年までの事業を軌道に乗せるまでの時期についてです。NIKEという偉大な会社においても創業から株式を公開するまでに18年の歳月がかかっていることがわかります。

欲をいえばNIKEが大ブレークした80年代以降のことについても詳しく書いて欲しかったなと思います。

ここまで各項目について飛ばし飛ばし書いてきましたが、詳しくは是非この本をお読みいただければと思います。

いやー面白かった。こんなに面白い本に出会えることは中々ないと思います。

参考になれば幸いです。

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